【Q】15年変動利付国債の貸借対照表価額に「理論価格」を採用する際のロジックを教えてください。
    【A】

2008年のリーマン・ショック直後の時期だったと記憶していますが、世界的に「市場機能の不全」が発生し、「流動性の低い金融資産に値段がつかなくなる」という事象が発生しましたが、これを受けて国際的に「時価(公正価値)概念の整理」がなされました。わが国では企業会計基準委員会(ASBJ)が「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い(実務対応報告第25号)」を公表しています(これを本稿では「第25号報告」と呼びます)。
実務対応報告第25号「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い」
2008年当時は金融市場における混乱を背景に、国際会計基準審議会(IASB)を中心に「時価会計の事実上の緩和」ともいえる例外的な取扱いが相次いで公表されていました。しかし、日本の場合、この「第25号報告」は「時価会計の緩和」ではなく、「既存の会計基準の理解を促進するために」公表されたものです。
この報告書は、「金融資産を取引する当事者は、継続企業を前提として、不利な条件で引き受けざるを得ない取引又は他から強制された取引ではなく、自らの経済的合理性に基づく判断により取引を行うものである」(実務指針第256項)との立場のもとで、「不利な条件で引き受けざるを得ない取引又は他から強制された取引による価格は時価ではない」(時価算定報告Q1等)と位置付けています。したがって、この報告書は、「市場の機能不全を受けて、変国のについては市場価格ではなく合理的に算定された価額を付すこと」を、ASBJとして、事実上黙認したものと言えるでしょう(ただし、ASBJとしては、「第25号報告は新たな時価概念を導入するものではない」とのスタンスですが…)。
これについて、拙著「金融機関のための金融商品会計ハンドブック」(P53~P55)に、当時の事情を踏まえた取扱いを取りまとめています。また、これについては当社レポートもご参照ください。