日本銀行は本日の会合で、「『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』の導入」を発表しました。内容としては、
①金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用する。今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。
②「量」:マネタリーベースの増加目標を年間80兆円とする(変わらず)
③「質」:資産買入れについては長期国債の保有残高が年間80兆円のペースで増加するよう行う、など。

既に資金循環統計等から判明する日本の資金構造でも明らかなとおり、日本の最大の問題点は、預金取扱機関(銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、JAバンク等)の預金量(2015年9月末速報値ベースで1307兆円)に比べて、運用先が少なすぎることです。2015年9月末時点における預金取扱機関の資産内訳は、次の通りです。
●現金・預金…399兆円(うち日銀預け金234兆円)
●貸出…718兆円
●株式以外の証券…401兆円(うち国債・財融債256兆円)
●対外証券投資…113兆円

つまり、日本銀行が量的緩和政策を行うことで、金融機関にとっては「買うべき有価証券(例:国債)が市場から枯渇してしまっている」という状況にあります。

ただし、「マイナス金利」については、インパクトとしては大きいものの、日本銀行は銀行等金融機関の経営を圧迫することを避ける観点から、「2015年1月~12月積み期間」を「基準期間」として、その平均残高部分に0.1%(従来通り)の金利を適用。また、「マクロ加算残高」と称する部分にはゼロ%を適用した上で、それらを上回る部分にマイナス金利が適用されることになります。つまり、金融機関の日本銀行預け金(234兆円)全体にマイナス0.1%の金利が適用されるわけではない(つまり預金取扱機関全体で年間2340億円の負担が生じるわけではない)、ということです。しかし、欧州中央銀行(ECB)やスイス国立銀行(SNB)等の中央銀行が採用してきたマイナス金利という「禁じ手」に、遂に日本銀行も手を出したことは事実です。物価目標の達成が困難であるという状況の中で、日本銀行は再び市場に「サプライズ」を与えた格好だといえるでしょう。