「通貨スワップ」と「為替スワップ」

「通貨スワップ」という用語には、「国家間の通貨の交換」、「デリバティブ取引」という、二つの意味合いがあります。

一つは「国家間の通貨交換協定」のことで、最近、ニュース等でも話題になる「日韓通貨スワップ」などのように、「中央銀行や中央政府同士が通貨を交換する国際的な取り決め」のことです。しかし、金融の世界で重要なのは、もう一つの「デリバティブ取引」という方の意味合いです。

例えば、日本円を持っている金融機関が、米ドルを持っている金融機関との間で、通貨の元本を交換する取引が、典型的な「通貨スワップ」であり、英語の「Cross Currency Swap」を略して「CCS」と呼ぶことがあります。

一方、「通貨スワップ」と似たような用語が「為替スワップ」です。これは、ごく短期(例:1か月、3か月など)の取引として行われることが多く、「通貨の交換」という意味では通貨スワップとよく似ているものの、一般に利払が発生しないという点で通貨スワップと異なります。

用語 通貨スワップ 為替スワップ
基本的な特徴 契約期間の当初に異なる通貨同士の元本の交換が行われ、契約終了時には反対売買が行われる。また、契約期間中には相互に金利の交換が行われる。直物為替相場と先物為替相場が等しくなる「直先フラット型」などが存在する。 契約期間の当初に異なる通貨同士の元本の交換が行われ、契約終了時には反対売買が行われる。なお、契約期間中に金利の交換は行われないため、その性質上、一般的に「直先フラット型為替スワップ」は存在しない。
法的根拠 金融商品取引法第2条第21項に定める店頭デリバティブ 明確な法的根拠は存在しない
契約形態 ISDA(国際スワップ・デリバティブ協会)の定めるデリバティブ基本契約書に従う 一般にISDAに依らず、個別契約書を取り交わすことが多い
契約期間 基本的に制限はない 一般に1か月、3か月などの短期間の取引である
利払 異なる通貨の利払のキャッシュ・フローを交換すること(つまり「ベーシススワップ」)を伴うことが一般的 一般に金利相当額は「直先差額」に折り込まれるため、明示的に「利息」の支払がなされるわけではない
会計上の取扱い
  • 会計上はデリバティブである。
  • ヘッジ会計の適用は容易(著者私見)であり、「直先フラット型通貨スワップ」の場合、有効性検証自体が不要(著者私見)
  • 要件を満たせば振当処理の適用も可能
  • 会計上はデリバティブである。
  • ヘッジ会計の適用には「有効性検証」が必要(銀行業が「第25号報告」を適用する場合などを除く)
  • 契約期間が短いため、振当処理を適用することができる取引は期間の短い予定取引や金銭債権債務に限られる
債券に対するヘッジ 債券をヘッジ対象とするヘッジ取引の場合、有効性検証が必要ではない。ただし、特に「米ドル・日本円」のCCSに関しては、「ベーシス」が大きく開いているため、日本の機関投資家が「米ドル建ての債券を購入して通貨スワップでヘッジする」ような取引は経済合理性に合わない。 債券をヘッジ対象とするヘッジ取引の場合、有効性検証が必要である。ただし、通貨スワップと比べると為替スワップの方が「米ドルの調達コスト」が安く、日本の機関投資家が「米ドル建ての債券を購入して為替スワップでヘッジする」ような取引は一般的に行われている。

なお、「為替スワップで米ドルを調達し、通貨スワップで米ドルを運用する」という取引を行えば、通貨スワップ市場における「ネガティブ・ベーシス」を取りに行くことができるため、いわゆる「銀行業の第25号ヘッジ」を活用することができる業種にとっては、「為替スワップ・通貨スワップ・ベーシススワップ」の投資戦略にも合理性があると言えます。

2018/06/05追記

国際金融協力の世界では、おもに先進国などがおもに発展途上国などに対して、通貨を交換する協定のことを、一般に「通貨スワップ」と呼ぶことがあります。この「通貨スワップ」は、上で述べた「CCS」とは別物であり、英語で “Bilateral Swap Agreement” と称するため、略称は「BSA」です。

一方で、おもに先進国の中央銀行同士で、民間金融機関に対する流動性供給オペの実施を目的としたスワップのことを、一般に「為替スワップ」と呼びますが、この「為替スワップ」も、上記で述べた「先物外国為替売買取引」とは別物です。なお、英語で “Bilateral Liquidity Swap Agreement” などと称するため、通貨スワップのBSAに倣って略すならば「BLS」や「BLA」などの表現が考えられます。

なお、一般のブログ・サイトなどを見ると、「BLA」と略しているケースもあるようです。

また、わが国の場合、通貨スワップ(BSA)については管轄が財務省ですが、為替スワップについては管轄は日本銀行です。